前回からの続きである。警備の仕事は何人かの
ローテーションなので。一人が脱落すると他の
警備員がその仕事を肩代わりしなければならない。
二人一変に脱落するとその負担は非常に大きな
負荷として残りの者にかかってくるのである。
私が在籍していた頃には、そのビルに配属されて
きて辞めていった人間も多い。中には同僚同士で
仲違いして両方、一変に辞めてしまったケース
もある。ある日、若い20代の男性が警備員
として配属されてきた。これは前に記事に書いた
ことがある変わった男性の話なのであるが、この
人物というのが厄介な人物であった。事あるごと
に人に対して何かしらの文句をポロッと
口にするような男性であった。おかげで皆から嫌
われていた。前にこの男性の記事を書いた時に、
この男性も酩酊症ではないかと書いたのであるが、
まさしくその通りのような感じであった。一般的
に酒の席では無礼講だという慣習のようなものが
あるが、それを地でいくような人間であったのだ。
人のやる事に逐一反発するのである。要するに
ひねくれているといった感じだ。例えば、ビルの
巡回に出ていって普通の人がかかる時間の半分の
時間で戻ってきてしまう。それを上司が咎めると
「ではもう一周してきましょうか?」と言うので
ある。すべてが万事この調子であるから、組む人
は皆、嫌がったのであった。そんな人間であるの
で問題は起こるべくして起こったのである。
その当時は警備のスタッフとして、警備会社在籍
40年ぐらいのベテランの60代後半の警備員の
男性がいたのだがその男性と全く、そりが合わない
で、しょっちゅういがみ合っていた。年配の男性
も少しクセのある人物で、任侠っぽい性格の親分肌
といった雰囲気のある人物であった。この人物が
また気が短く、その若い新米の男性をことあるごと
にポカリと頭を殴るのであった。これが2、3回
続いたところで新米の若い警備員は大元の警備会社
に直訴したようである。殴られた時の状況をメモに
残していて会社に訴えたのだ。そして若い新米男性
は数日後に辞めてしまった。この事を重く見た大元
の警備会社はその年配の警備員を左遷することにし
たのであるが、納得せず、この男性も自ら会社を
去ることになったのである。
警備というジャンルの仕事には、なかなか若い人間
が来ないので警備会社として若い人を大切にすると
いうような所があるらしい。ゆえにこういう、いざ
こざが起きると軽い処罰で済まされないという事だ
そうだ。この二人同時に抜けた事により、私の仕事
時間が一気に倍ぐらいになって辛い思いをしたのを
覚えている。まさに私に負荷を与えるために用意
したシナリオではないだろうかと勘ぐられるような話
であった。
こういった警備員の仕事というのは、いろいろな
境遇の人が集まってくる。若い新米の男性も他の
仕事に就けずに警備員の職についたのかもしれない。
他にも変わった経歴の人物もやって来た。もと
出版社の社長という肩書きの人物であった。自分
の会社が潰れたので急遽、警備員として働くという
ことになったらしい。仕事ぶりも初めてにしては
そつが無かったが、この人物も数ヶ月で辞めていっ
てしまった。理由であるが、前の自分の会社が潰れ
てしまって無職になったおかげで前の年収相当の
税金を払わなければならない羽目に落ち入っていた
のであったという。しかし税務署も借金のカタを
取ろうにも何もないので、様子を見ていたらしい
が警備員の仕事をしているという事を嗅ぎ付けて
税金の支払いを要求してきたようである。これを
突きつけられた男性は電光石火のごとく、警備
会社を辞めてしまったのであった。世の中では
よくサラ金より、税務署のほうが恐いという話を
聞くが、本当にその通りではないかと思った。
そのおかげで当時の私の仕事量もまた増えたという
ことである。この時は突然過ぎたので二日連続の
当直になった記憶がある。世の中は闇のおかげで
無慈悲な世界になっているようである。この人物
の会社も本当は闇の人間たちに潰されてしまったの
ではないだろうか。
最後に私自身の辞めることになった経緯について
話そうと思う。それは商業施設の火災報知装置の
誤報が原因であった。起こったのは土曜か日曜
の休日のある日の出来事であったと思う。
私が昼間の休憩中に防犯センター内の火災警報が
鳴り始めた。この時その防災センターの一室にいた
のは私と30代の警備の副隊長と設備の40代の
人間の三人であった。私は別室で休憩室にいたのだ
が副隊長が火災発報だと伝えに来た。防災センター
室内では二人があたふたとしている。どうやら商業
施設の一角のラーメン屋から火災時の排煙装置の
ボタンが押されて警報が鳴ったようなのだ。この
時どうしてどちらかが、現場に急行しないか、よくわか
らなかったが、私がすぐに現場行くことを申し出た。
そして着替えて行こうとした時、どういうわけか
設備の人間の姿が消えていた。どこへ行ったのかと
副隊長に聞くと屋上の空調設備の所へ空調を
停めに行ったらしい。その行動もどうかと思った。
もし火災だったら料理店なんだから火が他の油か
何かに引火して二次災害が起きるかもしれないのに、
一人は防災センターにいてあたふたとしており、もう
一人はあとでもいい屋上なんぞに行ってしまってい
たのだ。私はマジかと思ったが、そんなことは言って
いられないので急遽、、現場に直行したのだった。
現場のラーメン屋は中国人が経営しており、従業員も
中国人であった。日本語もたどたどしかったが、どう
やらその従業員の一人が火災時の排煙装置のボタン
を押したようである。調理場で料理をしている最中に
煙が多く出たために換気しようと思ったそうだ。そし
て目についたのが火災時の排煙装置のボタンだった
らしい。中国人だったので、なまじ漢字が読めるので
排煙装置の「排煙」を換気扇だと勘違いして押してし
まったらしいのである。とにかく火災ではなくホッとした。
大事ではなかったので、とりあえず私は防災センター
に戻ることにしたのだった。
しかし問題はその後に起こったのである。 防災
センターに戻って副隊長に誤報である事を伝えたが
私は商業施設の排煙装置の解除をよく知らなかった
ので副隊長にラーメン屋に行って解除してもらう事
にした。その後、副隊長が戻って来てから数分する
と屋上に行った設備の人間から電話がかかって来た。
電話を受けて、ただの調理場の調理時の煙で誤報だ
ということを言ったが途中で電話は切れてしまっ
た。そしてもう一回、電話が向こうからかかって来
たが音声が悪くてよく聞き取りずらい。先程の電話
で大事はない事は伝えてあったので、それほど気に
せずにいたが、向こうは事後処理をどうするか、聞
きに電話かけてきたようであった。この件は大丈夫
です。という事を言って、向こうも納得したと思っ
ていた。しかしこのやりとりが大問題となった。
しばらくしてその設備の人間が防災センターに帰っ
てきて、私らが誤報だったと言うと急に怒り狂い
「お前は火事だと言っただろう!ふざけるな!」
「おかげでビルの空調電源全部切ってしまった!」
と怒り出したのだった。「もうお前なんかと組みた
くない!」とまで言われて、とりつくしまもないの
であった。一応こちらの伝え方も悪かったかもしれ
ないと思っ謝ったが、私は火事だとは一言も言って
いないのである。彼の頭の中には私が火事だと言っ
た記憶だけが鮮明にあるようだ。電話のやりとりで
一瞬、不通になったが、その時に何者かが音声を
工作して挟んだのかもしれない。
そしてしばらくして私が「火事だなんて一言も
言っていない」と言うとキョトンとして、いや絶対
に言ったという事で、水掛論になったのである。
そして相手は、とうとう「言った言わないという問題
ではなく日頃の仕事に対する認識の甘さ」だと言い
はじめたのだ。結局この問題は私が悪いということに
されてしまったようだ。しかし、この件に関しては
それほどの懲罰は無かったのである。この私と対立
した設備の人間であるが少し、半グレのような雰囲気
があり、さらにいつも独り言を言っているような、
ちょっとおかしな所があった。この人物も酩酊症では
ないかと思われるような節もあるが、まさか工作でも
3人もそんな人間が一ヶ所に集中するとも思えない。
この事件自体は日が経つに従い、話題としては薄れて
いったが私の中で1つの不安材料として心の中に残っ
た。それはまた同じような事が起きたら自分のせいに
されるという不安である。何でもかんでも自分の責任
にされる可能性がある職場であるという事に危険を感
じたのである。それと嫌な人間も数人、存在していた
という事で、適当な理由をつけて退職することにした。
これが警備員を辞めた、いきさつというか顛末である。
集スト被害者がどこかへ就職して働く時はいろいろな
障害が出てくるだろう。それでも食っていくためには
外に出て働かなければならないのである。昨今、ニート
や引き篭もりが問題視されているが、無理もない。私
がいた環境のような仕事場に誰がずっと居たいと思う
だろうか。集スト被害者でもない少し繊細な心の持ち主
の一般の人でも劣悪な企業には拒否反応を起こすのは
当然なのだと思う。こんな世界にしているのは闇の勢力
であり、さらに感情操作を被害者、加害者にしているの
だと思われる。被害者に対しては精神的な負荷を与えて、
鬱にさせようとしており、加害者に対しては邪念の嫉妬
やら嗜虐心を植え込み、相手をいたぶるようにしている。
(中にはどこかから命令されてやっている奴もいるが)
以上が職場であった諸々の事であるが、またしばらく
したら外に働きに出なければならないと思うと憂鬱で
ある。これは偽ざる心情であるが覚悟を決めて邁進
して行かなければならないだろう。首をくくるのが嫌なら
腹をくくるしかないのである。
にほんブログ村